
Etsuko Yamane
Botanical Art & Illustration Studio
山根悦子ボタニカルアート&イラストレーションスタジオ
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描く前の豆知識
ボタニカルアートのルーツは古代ギリシャの医師によりまとめられた『薬草誌』にあると言われ、薬となる植物を類似種と区別するための植物図でした。図は写真のなかった時代に記録媒体として必要なもので、「品種までをも正確に描き伝える」植物学的な側面は今でも重要な要素となっています。
もう一つの重要な側面がアートとしての側面です。もっとも美しい花の向きや魅力的な植物全体のシルエットをあらゆる方向から探ったり、日々変化する花や実の旬の時期を逃さずに、彩りや構成を熟慮し描いたりなど、記録にとどまらないアート作品でもあるのです。ボタニカルアートは時代の流れの中で、異国の珍しい植物や園芸品種まで、あらゆる植物を対象に描かれるようになりました。また植物学者と画家との協働により、高い芸術性も加味され「植物学と芸術が融合されたジャンル」として確率されていったのです。
ボタニカルアートを描く上での工夫
1.実物大で描く:実物の大きさを知ることは品種の見分けに繋がります。
スケッチの取り方としては2通りあります。
*透視投影法:単一の視点からモチーフを描きます。(写真で記録するイメージ。)
モチーフに遠近感がつくので、手前のものは実物大に近く、遠くなるほど小さく描きます。
*平行投影法 : モチーフに対して垂直に一定の方向から複数の視点でモチーフを描きます。(複写機でコピーをとるイメージ。)
解剖したパーツや断面は平行投影法で描かれることが多く、微細な雌しべや雄しべ、種子などは拡大図で、高い樹木は縮小図で描かれます。その場合は、実寸を書き入れておきます。
2.品種の特徴や判別に役立つ情報が盛り込まれるようにする
3.植物に関係のない背景や花瓶などは描かない
4.基本的に静物画のように、地面や卓上に落ちる影は描かず、日が当たらず植物にできる暗い場所の陰のみを描く
生育環境を描く生態画は除きます。
5.植物が生育している向きに描く
枝ものは注意が必要です。シダレザクラなどの切り枝は花瓶にそのまま挿すと上下が逆さまとなり、生育とは向きが変わってしまうので、垂れるようにセッティングします。
着彩の道具

上から
洗い出し用(修正用)
平筆チズルブレンダー9450-2号
(アルファクラフトマスター)
細密用
コリンスキー910-3,2,1号
(ホルベイン)
彩色用
デザイナーズリセーブル小,中
(ホルベイン)
下塗り・水引き用
ニューリセーブル3100Rまたはミニリセーブル31R (ホルベイン)
着彩の工程に従い、使用する筆の出番が変わります
工程1.下塗り
広い面積に、薄い色を均一に塗る。
まず筆は水用、色用の2本を用意しておきます。着彩部分に水を塗ったら、水が乾かないうちに、用意した色用の筆で手早く薄めた色を均一に塗ります。
ですから、水の含みが良い羊毛にリセーブル加工された
ホルベイン社製の3100RNEW RESABLE または 31Rmini RESABLEを使用してます。
下塗りは直ぐに塗り終わってしまうので、使用頻度は少ないですが、ないと困ります。
モモやユリの花は着彩面積が広いので8号筆を、ツバキの葉位の面積ですとリセーブル彩色筆(小)で水を塗りをし、910-3号筆で色を塗っています。
*着彩の面積に適したサイズの筆を使うことが、重要です。
*きれいに着彩するためには手早さが肝心で、水用の筆と色用の筆の2本を用意しておくこともポイントです。
工程2.重ね塗り
乾かしては、色の層を塗り重ねて深みを出していく。
工程が進むにつれ、全体から細部への着彩に移っていくので、彩色筆(小) 細密用の筆コインスキー910-2,3号の使用頻度が高くなります。コリンスキー原毛は水の含みも良く、筆先が1点にまとまるので着彩にも描線にも適しており、完成までずっと使い続ける筆です。
ウインザー&ニュートンSeries7、ダヴィンチ-MAESTRO、ラファエル8404のコリンスキーも同等に使い易いです。
メーカーにより号数の太さには違いがあります。
ホルベイン透明水彩絵具
ボタニカルアート 24色セット
山根悦子監修

~24色の色組について~
*充実の三原色赤5色 黄3色 青4色
植物画に適した全く異なる性質の三原色を
バランス良く色組しています。
塗り重ねたり、混色する事で多様な色や
深みのある色が生まれます。
*三原色の混色では作り出す作り出すこと
の出来ない紫や使用頻度の高い緑・茶・
ペインズグレーを色組しています。
テクニカルガイド表面:基本の着彩方法
(裏面はアメリカンチェリーの着彩方法)

赤 花 実 茎など
黄 進出色
緑や赤との混色で彩度の高い色を作ったり、イチゴや深紅のバラなど赤い植物を発色良く仕上げるための下地色。
不透明なカドミウム系の黄色は下地にや
重ね塗りに利用している。
紫 花、赤の影(キナクリドンV)こげ茶の光沢部(コバルトV+ウルトラマリンB)
葉=Pバイオレット+フーカーズG
茶 木 枝 枯葉 実 花パンジー(パーマネントV+バーントシエナ)
青 後退色
性質の異なる4色の青を使い分け、混色し
多彩な緑の葉等の色表現に役立てる
植物の反射や光沢部(セルリアン ウルトラマリン)
影(コバルト プルシャン)
粉が吹いた緑色(コバルト)等
例:葉の影部分(プルシャンB+オリーブG、
コバルトB+オリーブG)など
てください。
緑+4色の青の使い分け+ペインズグレーなどで豊かな葉の色表現
緑 サップG,フーカーズGは混色せずにも使える緑色。この2色の緑に在中の青やペインズグレーを混色することにより多様な葉の色の表現が可能。
パーマネントG No1は混色したり、単色では重ね塗りで色調整に使ったりする。
リーフG=イミダゾロンY+パーマネントG No1
の混色で作ることができる。
光に透けた葉=サップG+パーマネントG No1
青や黄、茶との混色で緑色のバリエー
ションが広がる。
オリーブG=Bアンバー+サップG
ペインズグレー / ニュートラルチント
白い花の影(+リーフグリーン、オリーブGなど)
銀緑の葉や葉の光沢部(+バンダイキB+フーカーズG)
*ニュートラルチントは別売になります
<色の使い分け作品例>

黄色下地の赤い実


ボタニカルアート24色セットカラーチャート
透明水彩絵具といっても色により透明度は異なります。
透明-2○ 半透明-1△+1▲ 不透明+2●

水で薄めた極薄い色を
白い花の影に使用する
24色セット以外の色
